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ゴルフパッティング課題を用いた距離感に関する研究

概要




フォーラム研修3

 スポーツは長い歴史を通じて多くの人々を魅了し続ける人間の営みの一つです。スポーツの場においてみられる卓越した動きを理解する取組は、ヒトの能力の新たなる一側面を見出せる可能性をもっています。
 ヒトの高度な認知・運動能力を明らかにするために、脳科学、心理学、生理学、神経科学、工学などにおいて数多くの研究が行われてきており、理工学部において、スポーツ心理学の立場からヒトの「巧みさ」について研究しています。
 距離感は「環境の中から必要な情報を抽出する能力」と「適切な方略を選択する能力」である環境を読む力と力量発揮の掛けあわせにより生成されると考えられます。しかし、距離感を評価する際、実行結果に直結する力量発揮のみが議論の対象となり易く、優れた距離感を獲得・発揮するために必要な他の要因と力量発揮との関わり合いは未だ不明です。そこで距離感を定義することを目標として、異なる技能水準を有するゴルファーに参加してもらい研究を進めています。




距離感の解明に向けての取組


 研究グループは、ゴルフパッティングを運動課題とし、ヒトの動きを高い時間分解能で撮影できる光学式動作解析装置を用いて、環境を操作できる実験を何度も行ってきました。具体的には、①実行局面の動き→②準備段階の動き→③運動の方略→④知覚という通常想定される情報の流れとは逆の順序でそれぞれの局面における問題の解明に取り組みました。
 多岐にわたる検証の結果、プロ・アマともに適切な素振りを行ったときに最も正確にパッティングができることがわかりました。また、プロにおいては、適切でない素振りを行うと、素振りを行った強さ(大きさ)の方向に実打が引っ張られる傾向があること、一方、アマチュアにおいては、たとえ適切な素振りではなくとも、素振りを行った方がより正確にパッティングできることがわかりました。つまり、素振りの役割が技能の習熟度によって異なる可能性があります[3]。これは知覚-運動協調が必要な運動課題の機序の解明に貢献できる研究となりました。
 現在、我々は行為者の方略と知覚の解明に取り組むために新たな実験を行っている最中です。距離感の機序を明らかにすることで、未熟練者の上達を妨げるボトルネックを理解し、運動学習に応用できることを目標としています。




写真2